大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和24年(れ)3039号 判決 1950年6月13日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人池辺甚一郎上告趣意は末尾に添附した別紙書面記載の通りである。

第一点について。

憲法第三七条第二項は、裁判所は被告人又は弁護人から申請した証人は必要でないと思われるものまで悉く訊問しなければならないという趣旨でないことは当裁判所数次の判例の示すところである。されば原審において所論証人の訊問は必要でないと認めこれを訊問しなかったとしても所論のような違法はない。論旨は理由がない。

第二点について。

所論丹生谷フサエ名義の顛末書は同人の夫丹生谷信一が作成したものであること、同顛末書が原判決の証拠に挙げられていること、原審において弁護人は右信一の証人喚問を申請したことは記録上明らかである。しかし右顛末書はフサエの夫信一がフサエの代りに警察署に出頭してフサエの経驗した事実をフサエ名義で書面に作成したものであるから、信一はフサエの代筆をしたと同様であるといわなければならない。従って原審において右フサエを訊問した以上右信一を訊問しないで右顛末書を証拠に採用したとしても所論応急措置法第一二条第一項に反するところはない。従って所論の如き違憲論は採用できない。

第三点について。

所論顛末書はフサエの夫信一がフサエの代理として警察署に出頭しフサエの経驗したる事実をフサエ名義で記載したものであることは前点において説明した通りであるがこれを証拠とすることができない理由を発見することはできない。論旨は理由がない。

第四点について。

原審において弁護人は原審第一回公判期日前証明書二通を提出したこと並に右書類について証拠調をしないことは記録上明らかである。しかし右証明書は所論の如く被告人の性格行状等を立証せんとするものであり参考の為め一覧を求める趣旨にすぎないもので、旧刑訴法第三四二条に規定する証拠書類というような厳格な証拠方法ではない、と認められるされば原審において所論書類について証拠調をしなかったとしても所論のような違法はない。論旨は採用しがたい。

よって旧刑訴法第四四六条により主文の通り判決する。

以上は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例